2017年9月28日

茨城経済政策論

 長期デフレ下での平成資本主義の致命的失敗は、米英の新自由主義を模倣させた政商にして御用学者の竹中平蔵の謬説を小泉、安倍、麻生ら自民政権が次々採用したことによる、中流以下の所得階層の消費性向減少である。いわば田中角栄型の公共投資中心の財政政策は、日本の高度成長を後押しした様に完全に正しく、この方式を完全に歪め平成時代の日本経済を失敗させたのは、竹中、小泉、安倍、麻生らだったと結論できる。他方で、田中の後継者としての小沢一郎が率いていた民主党は大型の公共投資によって経済成長率を大幅に改善した上に、労働分配・所得分配ともに改善させていった。だが長州閥を気取る岡山出身の菅直人による独裁を志向した暴走によって民主内の空中分解が進み、東日本大震災が重なった際、ひたすら意地が悪い京都選出の自民党総裁谷垣禎一による挙党体制拒否や、小沢への疑獄裁判等を図った東京地検や自民党員からの嫌がらせもあり、これらの不手際の為に国民が民主党の失政と勘違いしていった。安倍政権にもどってからも、国政内の御用学者の位置に食い込んだ竹中の愚行は続く。結果、安倍は金融緩和による株価のプチバブルを誘発した。東京五輪を招致しながら大量の被災者をかかえた原発事故中の福島県を無視し続けた。そうして生活保護や障害年金の切り下げ、復興予算の縮小と被災者支援の打ち切り等など、貧者冷遇による格差拡大にせっせと努めた。これは経済成長率を恐ろしく鈍化させ世界最下位級(150位程度)におちぶれさせたうえ、復興特需も得られなくなり実質賃金や可処分所得は低下しながら、大企業優遇の数々は給与上昇につながらないまま内部留保だけを増大させていった。
 ここまでみてくれば、竹中、小泉、安倍、麻生らが内閣やその参与に属した自民党政権が平成経済の致命傷に働いたのが完全に理解できる。その根本原因は新自由主義政策による中間層以下の所得水準と消費性向の低下、つまり実質賃金低下である。小泉政権下で、竹中が己が経営者に就いた私企業の人材派遣業パソナに利益誘導しながら非正規雇用法を押し通させたのが、経済政策面で第一の失政だった。また森喜朗内閣時代に通した大店立地法により、自民党が地方商店街を破壊したのがその前座だったのだろう。池田勇人が所得倍増計画下で団塊の世代とそのジュニアという悪性の過剰人口を生み出した事も、不自然な人口ピラミッドによる年金・介護負担の過度の負担による急激な少子化をもたらし、現在の縮小経済の直接的原因になっている。
 これらから分析可能なのは、
1.中間層以下の茨城県民における県民所得の上昇
2.県内外における消費性向の高い集団に対する県内業者の販路拡大
3.不自然なユースバルジ(youth bulge若年層の過剰人口)を生じさせないまま壮年の職住定着率を漸増させていく
4.大店法による県外の郊外型企業の虫食いを回避する商店街復興の条例
が茨城の発展に有効だという事だ。
 1.については厚い中間層以下の可処分所得の上昇が即ちその地域の量的消費性向を意味するからだが、注意すべきは、この消費が県外からの購買につながる限り、GDP算定においても、県内の富の流出を意味することだ。極論すると、身近な恵まれない人に対する寄付を好み、しかも県外からの消費を嫌い、県内慈善の為の県外からの蓄財を是とする資質が最も望ましい。名古屋市や愛知県は尾張宗春以来のの藩風から「けち」を是としている。これは水戸藩の質実剛健や質素倹約の是とは趣が大分ことなる。愛知のそれはただ単なる守銭奴的態度である。茨城にあっては東京や京都の様な無駄な支出、見栄の為の浪費を戒める事による、自己資本拡大につなげるべきである。県外からの購買を可能な限り嫌い、身近な県産品を愛好する精神をはぐくみ、これまで通り、江戸・東京とすみ分けて、成金的浪費を下品とみなす精神的態度や地味を好む質素への上質な趣味を維持すればよい。
 2.については東京圏以外に海外販路を拡大する必要があるのだろう。茨城JETROと共に県内企業に海路・空路の両面から直接輸出政策、日本産という銘柄を利用した高品質農産物の販売網構築、あるいは輸出に有利な工場誘致などの外貨獲得政策を推進するべきだろう。
 3.については、出生率の急拡大または学生など若年層のみ、老年層のみの過度の人口急増を避け、賦課方式による負担を避けるよう人口ピラミッドの若年がわの微増を目指し、なおかつ、生産性の上昇につながる壮年の流入を図るべきである。だが、これには仕事場が必要だ。県内に職住近接型の工場又は企業とストレスなしで行き来できるセットになった住宅用地の確保が役立つ。公共事業で自然を保全したまま会社・住居(及び大型公園などの保養地)を最大限近接させた土地を、商店街の近隣に開墾した上で企業誘致し、宅地開発にあたっては需要に応じる能力のある民間事業者を募集する事である。この為の費用は国の復興交付金あるいは地方交付税など国の特別税から捻出するか、県産品を最大限に活用したふるさと納税で賄い、県又は市の公有地を市場価格より安価に提供する事で開発事業者を競争入札するべきである。
 4.については各地の商工会と協議の上で、県外企業が県内或いは市内に大規模店舗を立地するに際しては厳しい法人税、事業所税、地方税、土地税、特別法人所得税などの事業関税上乗せを徹底し立地を完全に制限するよう、茨城県大規模店舗立地制限条例を施行するべきである。また県内企業については、郊外型の大規模店舗より指定した中心商店街に店舗を立地した場合に、税制面で一定の優遇措置を行う事で県内活性化に益する様にするべきである。