2017年9月2日

茨城経済学

 TED(米国ニューヨーク市に本部のある非営利の講演団体)における演説の中で、アメリカの超富裕層に属するニック・ハノーアー氏は、安定した消費力を持つ豊かな中流階級が起業家の母体になるにも、彼らの購買する商品・サービスのある安定的な市場を形成するにも必須で、さもなければ暴動が起きるであろうと述べている。下記に引用した当演説の要旨にあたる記事でわかるように、資本主義の最も重大な欠陥は、格差拡大が極大化し、あたかも資本奴隷制下での新封建主義の様相を呈することにあるのだ。

 シアトル市の最低賃金を他連邦に比べ2倍にした、というニック氏が良識的な上に賢明な、特別な金持ちだという事は明らかで、この様な高徳の持ち主は、残念ながら現日本には私の知る限りだが一人もいなかった。勿論、商売人は言うに及ばず政治家の中にも皆無だった。柳井正の様な悪質な成金は、年収100万でしょうがない等と、ニック氏の真逆の悪徳を述べてさえいた。安倍晋三は賃上げ要求をしていたかもしれないが陸に実現もしていないし、経団連から企業献金という不正な受益をしている立場の自民党員が、民主・民進党と結び付けて蔑視した労働組合を排除しながら経団連に何を要求しても、出来レースであり同じ穴の狢でしかない。

 単なる模倣だから二番煎じに見えるかもしれないが、ただシアトルのまねをして茨城の最低賃金を旧来の2倍にする条例をのみ制定するのではなく、欧州で一般的な秩序をとりいれ、非正規雇用者の最低時給を正規社員以上にすることを企業に義務付ける条例を通しつつ、その最低額を5千円にするべきではないだろうか? 必然的に、生活保護を受けているより非正規雇用者になった方がかねがもらえるし、そのうえ先の知れない正社員にとどまるより流動的であっても挑戦的な新雇用に属する方が、むしろ安定的に豊かな生活を送れる土壌が作れるはずだ。豊かな中流の厚みが、結局は、消費やら資本増加の差益による搾取を旨とする富裕層の躍進についても有利なのだという啓蒙が、茨城の役割として期待されていると思えてならない。大井川氏は「【Pivote TV】Pivote Meeting”新しい茨城”の話を聞いてみよう!ゲスト:大井川かずひこ氏 from YouTube」の動画中で、知事・社長報酬が高すぎるという司会の指摘について無視を決め込んで、むしろ社長報酬より知事報酬の方が少ないのだから、といった横柄な態度でさえいる。大井川氏は、ニック氏のTED動画で述べている内容に比べて資本主義の本質的欠陥について無知だし、改善についても積極的でないということかもしれない。が、ニック氏のいうCEO、つまり取締役員もしくは社長の数と取り分の増大に比べて、末端労働者側の取り分の減退という致命的な社会複利の失敗について、もっと自覚的になるべきだ。はっきりいえば、複数いる会社役員もしくは社長に当てはまるのと同様に、知事報酬を現状の非正規雇用者が納得できる程度に下げたうえで、逆に非正規雇用者らの報酬を正社員以上に増大させれば、それが最大の経済効用を持つのだ。これは知事局の仕事の大変さに比べて低すぎる報酬による過酷労働をもたらすという点については、社会的共通認識として許せる程度に知事周辺の取り分を減らすべきだといえるだろう。

 また、この演説の中で、ニック氏はもう一つ重要な観点を提出している。それは「住民のために生産を改善した解決策の度合いが、起業家の報酬であるのだが、この解決率は、問題解決に参加できた起業家と消費者の母数によっている」即ち可処分所得の面で豊かな中流を意味する消費者がいない限り、生産・消費不順の解決率、つまり経済成長率は大幅に下がる、といいかえられる見解だ。単に起業家を育てようとするだけでは不十分なのだ。どれほど優れた製品サービスがあっても、それを消費しうるだけの可処分所得がある人々、つまり最低限度以上に余ったかねのある一般県民も育っていなければ、県の優れた経済を構築することはできないのだ。

 竹中平蔵を有して以降の自民党の経済政策とは頑として縁を切る必要がある。トリクルダウン、おこぼれは起きなかったし今後もごく一部の高級品の需要、それも県内に事業があるとは限らないものを除いては、起きないだろう。竹中は単に愚劣で自身の人材派遣会社で儲けただけの意地汚い政商で、政治家として完全に無能だったのだ。そして竹中に騙され非正規雇用法を通して以後の小泉純一郎、その後の安倍晋三、麻生太郎らによる自民党政権も、経済的には完全に無能だったと評するほかない。科学的に誤りであった施策を継続している、不正選挙までして権力維持に躍起の、反国民に違いない資本家による資本家のための租税回避地を無視する、腐敗した世襲権益・自民党幕府から離れよ。茨城単独で正しい理想の模範国ヒタチとなって、国連と全世界のトップを率いる世界一の国として、全人類にあるべき人道を教える。わが県に新しいリーダーとして期待される責務をはっきりと目標化して、旧日本国という失敗した泥舟から出よう。

ニック・ハノーアー: 超富豪の仲間たち、ご注意を ― 民衆に襲われる日がやってくる

8/25(金) 13:57配信

TED

皆さんは私をご存じないでしょうが 私は皆さんがあちこちで耳にする 上位0.01%の富裕層の一人で つまり紛れもないプルートクラット (超富豪 政治権力者)です

(中略)

問題は 格差そのものではありません 高度に機能する 資本主義下の 民主主義において ある程度の格差は必要です 問題は今日の格差が 史上最大であり 日々悪化しているということです そして もしこのまま富や力や所得を 一握りの超富豪に 集中させていたら 私たちの社会は 資本主義下の民主主義から 18世紀のフランスのような 新封建主義へ変わってしまいます それは革命前の 農具を持った民衆が 反乱した頃のフランスです


私には伝えたいことがあります 私と同じ超富豪や大金持ち バブルの世界で 優雅に暮らす人々へのメッセージです 「目を覚ませ」 目を覚ましましょう いずれ終わりが来ます 私たちがこの社会における あからさまな経済格差に対して 何もせずにいたら あの民衆が襲いに来ます 自由で開かれた社会で 今のような経済格差の拡大が 長く続くはずがないのです 過去にも 続いた例はありません 極めて不平等な社会には 警察国家や 暴動が付き物です 手立てを講じなければ 世直し一揆が私たちを襲いますよ 可能性の話ではありません 時間の問題です その時が来たら それは誰にとっても 酷いことになりますが 特に私たち超富豪にとっては最悪です

(中略)

私が訴えたいのは この経済格差の拡大は 馬鹿げていて 最終的には自滅につながるということです 格差拡大は私たちが 民衆に襲われる危険性を 高めるばかりでなく ビジネスにも大打撃を与えます 私たち金持ちの手本は ヘンリー・フォードでしょう フォードは有名な 「日給5ドル」という― 当時の一般的な賃金の 倍増計画を導入しましたが 彼の功績は 工場の生産性を 向上させただけではなく 貧しく搾取されていた自動車工たちを 自分たちの作る商品を買うことができる 成長した中流階級に転換させたことです フォードは直感していました 現代の私たちが認めるとおり 経済は生態系になぞらえて考えるのが 最適で 自然界の循環システムと 自然界の循環システムと 同様の特徴があり 経済にも企業と顧客の間に 循環システムがあるのです 賃上げによって需要が増し 需要によって雇用が増え それによって賃金や 需要や利益が増えます この景気の好循環こそが 今日の経済回復に 欠けているものです


だから私たちは 両政党で強い勢力を誇る― トリクルダウン政策とは手を切って 私が「ミドル・アウト経済」と呼ぶ やり方を採用する必要が あるのです ミドル・アウト経済では 経済というのは効率的で線形で メカニズム的であるから 均衡や公正に進む傾向があるという 新古典派経済学の考えを却下し 21世紀型の考え方を採用します 経済は複雑、適応的、生態系的なので 均衡や公正とは逆方向に進み 不平等になる傾向があり 効率とは程遠いが うまく管理されていれば 効果的であるという考え方です この21世紀型の観点でとらえると 現存する資源の効率的な分配によって 資本主義が機能しているのでは ないということが はっきり見えてきます


資本主義は人類が抱える問題に対して 新たな解決策を生み出すことで 機能するのです 資本主義の特質は 解決策を見つけるべく 進化するシステムだという点です 他の人たちの問題を解決した人々に 報酬が与えられます 貧しい社会と豊かな社会の違いは そこに住む人々のために 生産という形の解決策を どれほど生み出したかという 度合いの問題であることは明らかです 私たちの社会が保有する 解決策の総和が すなわち 私たちの繁栄であり このことが グーグルやアマゾン マイクロソフトやアップルなどの会社や こうした会社を作った起業家たちが 我が国の繁栄に大きく貢献したと言える 理由になるのです


この21世紀型の観点でとらえると 私たちが問題を解決した率をもって 経済成長を理解するのが 最も適切だということも はっきりしてきます しかしその率は問題を解決した人の数― 問題を解決する能力のある多様な人々を 私たちが何人持っているかに かかっています つまり私たち市民のうち何人が 解決策を提供できる起業家として また その解決策を購入する消費者として 積極的に参加できるかによるのです しかしこの参加の最大化というのは 偶然 起きたりはしません 自然に起きる訳ではないのです 努力と投資が必要です だからこそ大いに繁栄した 資本主義下の民主主義は どれも皆 中流階級と 彼らの生活を左右する インフラに対し 大規模な投資を行うという 特徴があるのです


私たち超富豪は この 私たちがさらに富めば 他の人にも富が浸透するという トリクルダウン経済から 脱却する必要があります トリクルダウン理論は間違いです そんなはずがないでしょう 私には平均賃金の 千倍の収入がありますが 千倍多く買い物したりはしません そうでしょう? 私はこのズボンを2本買いました パートナーのマイクいわく 「経営者ズボン」 私はこれを2千本買えますよ でも買ってもしょうがないでしょう? (笑) 私が床屋に行く回数も 外食する回数も そう多くはありません 超富豪がいくら富をかき集めたところで 国家規模の経済を動かすことは 絶対にできません それが可能になるのは 中流階級の成長によってのみです


「手の打ちようがない」と 超富豪の友人たちは言うかもしれません ヘンリー・フォードの頃とは 時代が違います 出来ないことはあるでしょう でも出来ることもあるでしょう

2013年6月19日 ブルームバーグに私の書いた記事が 掲載されました 『最低賃金15ドルという資本家の理論』 という題です 賢明なフォーブス誌の人々の中には 私の熱狂的なファンがいますが 彼らに「ニック・ハノーアーによる とんでもない提案」と呼ばれました しかし その記事が掲載されて ほんの350日後 シアトル市長のエド・マレーが シアトルの最低賃金を 時給15ドルに上げるという条例を 法律として成立させました これは連邦内で一般的な 時給7ドル25セントの 倍以上に当たります 何故そうなったのか 分別ある方なら疑問に思うでしょう その理由は私たちが共同で 中流階級の人々に 彼らこそが資本主義経済の 成長と繁栄の源であると 再認識してもらったからです


労働者が持つお金が増えれば 企業は顧客が増え 雇用を増やす必要が出てくると 再認識してもらいました 企業が労働者に生活賃金を払えば 納税者は食糧配給券や 医療扶助、家賃補助などの 労働者が必要とする 生活保護制度の財源を 負担することから 解放されるということを 再認識してもらいました 低賃金の労働者は 納税状況が極めて悪く すべての企業が 最低賃金を引き上げれば どの企業も潤い 競争も起きるということを 再認識してもらいました

(後略)