2013年03月06日
Y染色体の起源を探る
背景:
ヒトは遺伝情報を保存するDNAの構造の1つとして染色体を利用している。ヒトは22組の染色体と性別を決定する1組の性染色体を持っている。性染色体がXXの組み合わせだと女性、XYの組み合わせだと男性として成長していく。
要約:
現在生息している全てのヒトは1組の夫婦から広がっていったという考えがあり、ミトコンドリアは母親のみから、Y染色体は父親のみから受け継がれるため、その場合の母親をミトコンドリアイヴ、父親をY染色体アダムと呼ぶ。では現生人類の持つY染色体の元となったアダムはどれほど昔のヒトであったのだろうか。
この度アリゾナ大学のMichael Hammer博士らによって、Y染色体の共通祖先はこれまで考えられていたよりも70%さかのぼり、その起源は現生人類が歴史上に生まれるより以前、さらに現生人類の祖先がネアンデルタール人と分岐する以前である、338000年前となることが、最新のデータから導き出された。
Y染色体は、他の染色体と違って変異を起こしにくい性質を持つため、その先祖を容易にさかのぼることができる。例えば、ある2人のY染色体が同じ変異を持っていた場合、その2人は過去のどこかで共通の父方の祖先を持つことになる。そのため、Y染色体上の変異に措いてより多くの違いが見つけられると、父方の共通祖先はよりさかのぼられることになる。
今回見つかったY染色体は、サウスカロライナ州に住むアフリカ系アメリカ人のものであり、とても珍しい変異を有していた。このY染色体はカメルーン西部の狭い地域に住むムボと呼ばれる人々と似たものであり、このゲノムを50万人以上の個人から成るY染色体系統樹やデータベースと共に解析することで、上記のような結果が得られた。
これまでY染色体で最も分岐していたのは、ピグミーやコイサンのように狩猟・採集生活を送る、多くの現代人から最も遠縁となっている人々であった。そのためHammer博士によると、今回カメルーン西部のごく小さな地域でこのような事実が見つかったことは、驚くべきことであったという。
今後、アフリカ系アメリカ人やアフリカ人の中に更に広く分岐したY染色体系統が見つかる可能性はあるだろうという。すると、Y染色体系統樹の年代は更にさかのぼっていくことになる。
http://blog.livedoor.jp/xcrex/archives/65736432.html
元記事:
Human Y Chromosome Much Older Than Previously Thought
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/03/130305145821.htm
参照:
Fernando L. Mendez, Thomas Krahn, Bonnie Schrack, Astrid-Maria Krahn, Krishna R. Veeramah, August E. Woerner, Forka Leypey Mathew Fomine, Neil Bradman, Mark G. Thomas, Tatiana M. Karafet, Michael F. Hammer. An African American Paternal Lineage Adds an Extremely Ancient Root to the Human Y Chromosome Phylogenetic Tree. The American Journal of Human Genetics, 2013; DOI: 10.1016/j.ajhg.2013.02.002
以上の論文から、Y染色体アダムがカメルーン西部のムボ族付近にある33万8000年前の父系遺伝なことがわかるので、日本起源の神話である『古事記』『日本書紀』の天孫降臨や国生みの科学性は否定されることになる。また万世一系という父系遺伝による世襲人種差別的な天皇一族の排他的神格化も無意味になる。その遺伝はさらに共通の祖先であるY染色体アダムからつながっているものにすぎず、共通祖先は日本国外、しかも原生人類ではないヒトかそれ以前の哺乳類にいるから。
またここから、天皇家がよつぎで尊属するばあいかならずしも父系遺伝でなければならない理由はないことになる。奈良で天皇家によりつくられた神話のなかで天皇直系の父祖とされる天孫あるいは天照大神なるものの創造性が日本に限定されているかぎり、その存在はY染色体アダムの傍系であることになるだろうし、神武天皇以降の歴代天皇もそうだ。そして女性天皇を天皇をかえりみれば、父系遺伝の一系保守性あるいはひとつづきのY染色体崇拝論というのは単に日本の皇統のなかでさえ事実的でなく、祖先崇拝という神道思想の一傾向のなかにつくられたごく最近の慣習であるとわかる。
もし血縁差別をするなら、これ自体が日本国憲法十四条の法の下の平等の理念とは矛盾もしているため「天皇は国民ではない」ゆえに国民や世界の人類がなにをされても日本の法律によってはさばけない、という完全に異常な悪魔を国内に存在させているどう仕様もない定義がなりたってしまう。また特にY染色体血縁差別、父系遺伝の一系保守性をとおすばあい、幕府からおわれた後醍醐天皇をたてた楠木公を表彰してきた水戸学や天皇家・徳川家のいわゆる南朝正統論とは決定的に矛盾し、かりに今後も同様の定義にもとづけば、たとえある天皇を当時の政治権力者がおいたてて別の天皇をたててもなんら問題ないことになる。おそらく尊皇主義者であった義公が心配したのはこの部分なのだろう。また明治天皇や孝明天皇の様、ちちはおなじでもははの家へ養子にはいったこのばあいはキリスト教やユダヤ教のおしえをふくむ近代法の男女平等制を否定してしまう。