2017年10月27日

茨城県の相対幸福論

 幸福とは、次の3つの側面が満たされている場合である。
1.主観幸福(絶対幸福)、中毒性
2.客観幸福(相対幸福)、比較性
3.中庸幸福(中間幸福)、社交性
 幸福な社会とは、これらのうち、特に客観幸福、相対幸福に深く関わっている。或る社会と別の社会を統計等で分析する事もできるからだ。
 対して主観幸福は個人的なものであり、そこで選好される脳の快楽は、個人がもっている資質と徳によっている。つまり事物に対する評価基準としての趣味が中毒性として、主観幸福をもたらしている以上、その最大化には人生を選べる自由度が高い事、個人の趣味をみたす選択肢が、他者への有害度に応じて法的に費用が内部化され(外部不経済の内部化)逓減されながらも多岐に用意されている事で十分である。
 また中庸幸福とは同好の士とか別の趣味、考え、文化のもちぬしとの交流で学び、時に相互利益を与え合う事によっている。つまり模倣や反例の機会が得られる事によるので、通信、交流の増大によって、自己向上や自らの社会への還元、或いはより自らにあった集団や地位への移動が可能なのだ。

 ところで幸福な社会を目指す、という大井川知事は上述のうち、特に相対幸福を十分に考察する必要がある事になる。そして既に現代までにわかっている事として、ある社会の客観幸福度が最大の地域は、高福祉国家だ、という事である。特に模範的なのが北欧諸国、つまりノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク諸国であり、その特徴はこの論考の末尾に参考資料1と2を付記したよう、相対的貧困率が低く、高累進課税率と高福祉が両立しており、結果、人間開発指数が高い事だ。日本国の単位では、これらはきわめて失敗している。それは自民党や安倍政権がこれらを相対不幸にするような、アメリカ型の新自由主義(neo liberalism、ネオ・リベラリズム、ネオリベ)的政策を導入しているから、という面が大きく、2017の衆院選で明らかになったよう、日本人の多数派や若年層は、相対的にこのネオリベ政策を選好する傾向をもっている。いわば平成末期の日本国単位で相対幸福な社会を作る事については絶望的であるし、若年層の受けた、或いは現時点で文科省に指導されている教育と知識の範囲では、今後も相対幸福を今より向上させようとする誘因がない。首相がアメリカ被れなので、文科省もそれに習い、相対貧困率が先進国でびりからアメリカ、日本である、という現実を反省せず、単なる大企業優遇の結果としての(内部留保の過剰による)国民純資産の世界一の程度、超富裕層有利な税制による一人当たり国民所得の低さ、人口の多さからくる総GDP値について、途上国やアジア諸国と比較して悦に入っているような子供がふえている、というだけなのだ。この種の現象を民意だと述べる衆愚に対しては、彼らの無知と、社会学的理解度の不足と、アジア蔑視による自惚れという悪徳が由来なので、為政者は超越的に無視しなければならない。なぜなら彼らを相対幸福に導く過程で、教育程度の向上で彼らに先進国相応以上の知性がえられたなら、過去の誤った判断に気づくのは必然だからだ。下記参考資料3にみられるよう、北欧諸国の一人当たりGDP、一人当たり国民所得は、為替の影響が少なく円高円安の影響を受けづらい購買力平価においても、新自由主義的な経済政策をする日本より高い。この理由は、高福祉下での無償の高等教育は知的民度をあげるので、ある個人の高学歴と一人当たり高所得或いは労働生産性としてみた一人あたりGDPは一般に正に相関するからだし、嫉妬やねたみが脳内では苦痛と同等の処理をされている事はしれているので、高累進税率はその社会を中心にした情報環境下にくらす限りで、共感知能による苦痛を減らすという意味で不幸感の減少と正に相関するからである。
 以上の理由から、相対幸福な社会に茨城県をする為には、
1.高福祉化(保育、教育、医療、介護等の社会奉仕の充実)
2.高累進税率
この2つの方針を同時に進めることで、高教養化(高学歴、知的開発、質の高い教育)や人間開発指数の上昇、県民一人あたり所得や一人あたりGDPの上昇を導く事が必要だ。茨城県民の中での相対貧困率の上昇は、不幸感を蔓延させるので望ましくない、という点に注意が要る。大井川知事は東京やシリコンバレー、あるいは彼が模範というシンガポールの社会に慣れたり憧れたりしていて、それらは巨大な相対貧困社会だったわけで、大井川氏がマイクロソフト・アジアやドワンゴの役員としてみてきた世界も、その格差の上位側からみたものにすぎなかった。政治の経済に果たす第一の役割は、能力に応じた配分を司る商売に対して、救貧的な調整による結果平等を導くものである。超格差社会アメリカではカネ全体の半分以上を10人が握る、という1%未満の虚栄と99%以上の不平が常態化し、フードスタンプによる配給すら行われているわけだ。相対貧困大国というアメリカをまねているネオリベ安倍政権下の自民党と、それを支持する日本国民一般を変えるすべはマスコミ発信力の低い茨城県民側にはないから、我々にできることは茨城県政の単位で相対幸福社会を実現する為にあらゆる手を尽くすだけだろう。
 また、保育、教育、医療、介護などの社会奉仕は、公的予算を高累進課税によって確保してから、透明で公平な競争入札によって民間事業者に委託するべきである。その意味で、これまで公務員として教師が運営してきた公教育、または県立、私立などの病院そのものが考え直されなくてはならない。つまり私立の学校や病院に対して、費用分の効果の面から、競争的に予算を配分する事の方が、公的運営の非効率や低品質を避けられるかもしれない。茨城県内の各県市町村はこれらの委託先に対する外部監視者として、県民、市町村民からの通報を最大限うけいれる体制をつくりつつ、管理者として機能すれば十分である。いわゆる計画経済による需給差の失敗を避けるだけでなく、低品質で保身に走る公務員化した教員や医師を最小化できるし、民間に調整が図られるので市場の活性化にもつながる。
 高福祉にとって最善なのは、功利主義と格差原理に基づき、その社会で最も恵まれない人且つより恵まれない人の利益を最大化することである。既に恵まれている人をさらに恵むという機能は自由競争市場の商業が資本主義において既に可能にしているのであり、政治はこれによって生じる外部不経済つまり公害や、社会への福利的害を最小化しながら、累進税的に相対弱者の救済を図ればよく、即ち弱肉強食をはかるのが商売であるなら勧善懲悪をするのが政治であり、こうして両輪が駆動しながら商売と政治が調和的正義を達成する事が、優れた社会だということになる。

資料1
幸福度の総合ランキング2016ー国連
1. デンマーク 与党:社会民主党(デンマーク社会民主党)
2. スイス 与党:スイス国民党
3. アイスランド 与党:独立党
4. ノルウェー 与党:社会民主党(ノルウェー労働党)
5. フィンランド 与党:社会民主党(フィンランド社会民主党)
・・・
54. 日本 与党:自由民主党

資料2
      相対的貧困率  ジニ係数 ‘09輸出依存度('16貿易依存度)'17与党  
チェコ     4.22      25.96     (130.65) 社民党
デンマーク   4.32      22.48   29.8(62.07) 社民党
スウェーデン  5.25      24.28   32.1(57.27) 社民党
ルクセンブルグ 5.46      26.06   20 (62.32) 社会労働党(社民党)、民主党
オランダ    6        25.06   54.3(112.78) 自民党
ノルウェー   6.33      26.1    31.34(41.75) ノルウェー労働党(社民党)
フィンランド  6.36      26.1    24(49.49)  社民党
スイス     6.74      26.66   33.7(87.39) 社民党、自民党、国民党
フランス    7.04      27.3    17.9(42.58) 共和国前進
ベルギー    7.74      27.16      (116.92) 新フラームス同盟(地域主義) 
ハンガリー   8.2       29.34   64.9(143.39)フィデス(キリスト教保守民主主義)
ドイツ     8.89      27.75   33.6 (68.28) CDU/CSU、(社民党は第二党)
オーストリア  9.29      25.19    34 (74.29) 社民党
カナダ     10.34      30.09   23.4 (52.45) 保守党
ニュージーランド10.4      33.67    21.6 (38.28) 国民党
オーストラリア 11.2      30.5    15.6 (30.67) 保守連合
イギリス    11.42      32.56   16.3 (38.39) 保守党
イタリア    12.9      34.71    19.2 (45.93) 民主党
日本      15.25      31.38   11.4 (24.76) 自民党
アメリカ    17.09      35.67   7.4 (19.66) 共和党
相対的貧困率…高いほど不幸
ジニ係数…高いほど不平
輸出依存度、貿易依存度…高いほど開国
与党…高福祉の社会ほど幸福度が高い

資料3
格差の小さな国は、幸福度が高い。ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマークが代表。低格差と高所得、高経済力は両立する。
一人当たりGDP 2016
3位ノルウェー ノルウェー労働党(社民主義)
9位デンマーク 社民党
12位スウェーデン 社民党
17位フィンランド 社民党
22位日本 自民党

一人当たりGDP(購買力平価) 2016
7位ノルウェー ノルウェー労働党(社民主義)
17位スウェーデン 社民党
23位デンマーク 社民党
29位フィンランド 社民党
30位日本 自民党

国民一人当たり所得(GNI) 2016
5位ノルウェー ノルウェー労働党(社民主義)
11位デンマーク 社民党
12位スウェーデン 社民党
23位フィンランド 社民党
32位日本 自民党

国民一人当たり所得(購買力平価GNI、世界銀行統計値) 2016
10位ノルウェー ノルウェー労働党(社民主義)
16位デンマーク 社民党
18位スウェーデン 社民党
26位フィンランド 社民党
27位日本 自民党