2021年8月27日

イギリス政府による大規模催事についての発表の、科学的分析

以下のURLでイギリス政府から示されるところ、同政府が調べた大規模催事の感染率は通常時と変わらなかった資料が得られたらしい。
 もしこれが国際的にどの国、どの集団でも事実なら、茨城県内での大規模催事もできるとなるかもしれないが、実際の日本側だと、五輪開催に際し会場付近で都民が密になる機会がふえ、同時に感染爆発がみられたので、そのころ流入しだしていたラムダ株など感染率の高いウィルスの影響なのか、単なる大規模催事でも感染率が特定箇所で有意に上がっていたのか、曖昧なままというべきだ。イギリス政府は飽くまで数えられる少数例を調べ(なお一国内の限定例で、標本として片寄りがある)、そこでは統計学上の有意差がみられなかった、と示しているに過ぎないし、実際以下の引用部分で示されるとおり、「催事での感染拡大が確かに・参加時点であったとはいえない(要するに現実の催事参加者らの間であった感染理由がよくわからない)」とイギリス政府もこの点に確信を持っている訳ではない。
 つまり、科学的資料として、イギリス政府の現時点の見解は、イギリスでの大規模催事が確実に感染拡大につながった証拠が得られなかった、といっているにすぎず、それは「大規模催事では感染拡大が進まない」事を示しているわけではない。よって、なんらかの大規模催事で感染拡大が進む場合がありえ、直ちに日本でも全球比較で感染率が著しく高い欧米地域と同様に、無条件に大規模催事をおこなってよい、とはいえない。なぜならイギリス政府の示した少数例では催事時の確定的な感染率増加の証拠がとれなかったにすぎず、実際には参加者の一部かそのクラスター(束、たば)などで有意に感染拡大が進んでいたかもしれないし、それどころか別の国の別の催事では感染爆発が束で発生した、なども十分ありえることだからだ。要するにイギリス政府は、UK国内の特定標本に関する統計的信憑性について、余り拙速に過度の一般化を行っている可能性が残されているわけだ。
 これは日本側で一部都民ら五輪強行論者が、英米など感染率が著しく高い国々での大規模催事再開の動きを、さも「先進国だから正しいに違いない」という文脈(西洋主義、入欧主義)で過度に信頼し、さるまねさせようとしていた場面でも広く見受けられた誤解だといえる。それらの国々でまだ十分な安全さが証明されているとは言えない段階での大規模催事再開の傾向は、文化依存のワクチンへの科学主義的な信頼度とか、集団への迷惑より個々の自由を重んじる個人主義とか、或いは頻繁で気軽な社交の習慣などがおそらく間接的に関係している様に見えるのに加え、ただの楽観偏見によっている風にも見える。そして実際に欧米諸国はまだ全地球でコロナ感染・死亡率が最も高く、この点で全ての人類生活圏の間で最も成績が悪く、反面教師とすべき地域のままである。

 もっといえば、今後、世界中で大規模催事が開かれるにあたって、過去のイギリス政府見解を十分に反証する資料がとれることになるので、実際に会場付近の束で確実に感染拡大が起きた例も出てくるに違いないし――特にマスク着用・手洗い等が不完全、かつ換気の悪い条件で不特定多数と密になる条件で、常識的にみてとても感染可能性が高い筈なので――、そのときイギリス政府の今回の見解は程あれ否定される。すなわち大規模催事のどの条件では感染拡大が進み易いかが、もっと色々な実例で示される事になるわけだ。よって、このイギリス政府の発表は、現時点で大規模催事が全て安全だ、と言い切れる科学的根拠となっていない。

 これらの箇所は、科学的思考力が一定以上ないと「大規模催事まるごと安全」論と見分けがつかないと思われるので、――例えば安直に「UKでは感染拡大してないとあの大英帝国の偉い偉すぎる政府様がいってんだから、科学後進国のわが国如きでやってもきっと誰も大して感染しないし間違いなく大丈夫だろう」と、科学的批判思考をほぼ放棄で、自虐史観じみて考えてしまうとか――、日本にかぎらず、科学的思考力が十分にない一部民衆の間に、単なる英国政府見解を誤読させる形で流布するのは、行政としてよく考えねばならない件だというべきだ。

 これら2つの催事(催し物、イベント)から得られた資料は、催事調査計画の一環として実施されたほかの大部分と同じく、共同体の感染率と同じかそれ以下の感染数とともに、大人数参加の催事を安全に行える、と証明しています。但し、この資料を観察する際には、催事で確かに感染が発生した、のみならず、催事へ参加したとき個人が感染した、どちらの仮定も立てられない、と記すのが重要です。
―― UK政府 『政府資料は大規模催事が安全に行えると示しているが、観衆は人混みの中で注意を怠らず、予防接種を受けるよう強く勧める』
数字・文化・媒体・運動省、健康・社会保護省、イングランド公衆衛生局、ロムフォードのベッチェル卿、オリバー・ダウデン英国議会議員閣下
2021年8月20日発行

   The data from these two events, alongside the majority of others conducted as part of the Events Research Programme, demonstrate that mass participation events can be conducted safely, with case numbers comparable to, or lower than community prevalence. It is however, important to note that when observing this data, assumptions cannot be made that transmission definitely happened at the event, nor that individuals became infected at the time of their attendance at an event.
-- UK government "Government data shows mass events can take place safely but fans urged to remain cautious in crowds and get vaccinated"

Department for Digital, Culture, Media & Sport, Department of Health and Social Care, Public Health England, Lord Bethell of Romford, and The Rt Hon Oliver Dowden CBE MP
Published 20 August 2021

https://www.gov.uk/government/news/government-data-shows-mass-events-can-take-place-safely-but-fans-urged-to-remain-cautious-in-crowds-and-get-vaccinated

https://news.yahoo.co.jp/articles/33a3fd6a6171410b97ed28cd09d9f28490d94132