2021年3月18日

前田英子裁判長は名誉茨城県民・水戸市民にふさわしい

日本原子力発電(東京都千代田区)東海第2原発(茨城県東海村)は安全性が確保されていないとして、茨城県など9都県の住民が同社に運転差し止めを求めた訴訟で、水戸地裁(前田英子裁判長)は2021年3月18日、運転を認めない判決を言い渡した。
――日本経済新聞『東海第2原発の運転認めず、水戸地裁判決』2021年3月18日

水戸地裁の前田英子裁判長は、本気で、茨城県・常陸国史全体で言っても最も優れた判決を今日出したといっていいと思う。これは冗談抜きで日本国全体のみならず世界史全体にとっても快挙であり、ある立地自治体の外の何らかの会社・政府が、立地自治体の住民の意向を無視して、公害で金儲けをする権利はない、と認めた様なものだろう。

 福井地裁もこの点では誠実な判断をしたといえるが、茨城の場合は県民投票による民意が自民党(県議)の公益を害する党利党略によって侵害されている最中なので、いわゆる党争によって解決を図ろうとしている最中だったわけである。自民党県連の保守派を完全にやり込めない事には一歩も公害防止ができない状態にあったが、その自民党が原発中立を気取っていた大井川知事の再選を表明してしまったので脱原発が頓挫したままだった。

自民党の秋本真利衆院議員=千葉9区=が水戸市で2021年3月28日に予定している脱原発をテーマにした講演会を巡り、自民党茨城県連幹部が講演会を中止するよう党本部に要請していたことが16日、県連幹部への取材で分かった。(中略)県連は、秋本氏から講演会開催について事前に連絡がなかったことなどを問題視。県連の海野透会長代行ら幹部が12日、都内の党本部を訪ね、二階俊博幹事長に講演会を中止するよう対応を求めた。秋本氏の事務所にも抗議文を届けたが、返事はないという。
ー―茨城新聞『脱原発テーマの講演 自民茨城県連が中止要請 秋本衆院議員が水戸で予定』2021年3月17日(水)

 他方、スガ首相側は低炭素文脈で脱原発に舵を切っていたので、要するに茨城自民党側だけが、東京都の日本原電と共に、公害を前提にした拝金目的で、日本全体の脱原発趨勢の足を引っ張っている状態だったというほかない。端的に言うと、東電はじめ自民党内の原発保守派は、時代の必然的な再生可能エネルギー転換への流れについてこれなくなった人たちである。

原発を中心とする大規模集中電源にはコスト的な優位点は全くない。(再生可能エネルギーの発電コストが低減し導入が進む一方、原発は新増設や建て替えに多大な費用を要することから)フェードアウトしていく
ー―秋本真利、自民党・衆議院議員

  しかし前田裁判長の英断で完全に再稼働派が敗れた。これで茨城県民と首都圏・南東北圏の住民が、命も財産も、幅広く救われたといっていい。
 茨城県庁や水戸市はこの英断に敬意を表し、前田英子氏に名誉県民・名誉市民の称号を与えるべきに違いない。脱原発を表明した前・橋本知事に、進んで反旗をひるがえした大井川知事が責任放棄でずるずると重大事を先延ばしにし、自民党の保守派につけあがらせた因果が、こういう結末になった。
 大井川氏は本来、行政側が決断すべきことを司法任せにした責任を感じてほしい。一体どこの世界に、千葉から通って茨城県知事をして、しかも茨城県全域に大公害をもたらす東京都の会社がもっている危険施設に再稼働許可するやつがいるのだろうか。それでは茨城県民を犠牲に自分が最高の地位からただ飯くらってるようなものであろう。再選防止条例をつくるといってたのに二期目もやるつもりって時点で、公約的に問題ある。一体いつになったら最初から権利侵害にすぎない再選防止条例なんてつくれるつもりなのか。県民が誰かに知事を頼む権利をなぜ行政の長が侵害できるのか。県民に具体的に公害をもたらす施設で、間接的に日本原電と絡んで、交付金で金儲けしてきた自民党電源保守派ともども、是非とも県議会で説明してほしい。