『衝撃!「水素社会」は来ない』 文谷数重(軍事専門誌ライター)
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水素には輸送や貯蔵に問題がある。そのコストを考慮すれば、水素をそのまま使うよりも石油化学の原料に使い、ガソリンや軽油といった液体燃料に変えて使ったほうがよい。
…東京都はオリンピックを期に水素燃料電池の利用を進めようとしている。…。神戸市は「水素サプライチェーン構築実証事業の推進」により輸入水素の扱いを狙っており、山口県周南市も「周南市水素利活用構想」で水素供給網整備を計画している。…だが、水素には輸送と貯蔵に困難がある。このため、水素社会は来ないとみてよい。
…まず水素は輸送が困難である。水素は経済的な輸送ができない。…トラック輸送は絶望的…タンカーも同じ…輸送効率の悪さは水素タンカーも変わらない…パイプラインも難しい…貯蔵も難しい…つまり、水素は貯蔵には向かない。その点で水素ステーションといった発想そのものが筋悪ということだ。…製造も難しい…水素は製造も効率が悪い…
液体燃料にしたほうがよい…水素をそのまま使うのは効率が悪い。既述のとおり輸送や貯蔵が厄介であるためだ。現実的には、生産した水素は液体燃料製造に回したほうがよい。水素があればガソリン、軽油、灯油の製造が可能となる。…
水素があれば燃料合成ができる。水素と二酸化炭素と熱があれば、FT法その他で燃料が合成できる。二酸化炭素と熱は高炉やゴミ工場から入手できるし、その場合は二酸化炭素排出量から差し引くこともできる。
また、水素は低質油の改良にも使える。今ではあまり需要のない重油に水素を接触させることでガソリンや軽油といった軽質油に変えるものだ。
さらにバイオ燃料製造にも使える。植物油脂は水素を添加することで柔らかくなり、ディーゼル・エンジンやジェット機を含むガスタービンには利用可能となる。オーランチオキトリウムやボトリオコッカスといった藻類由来の油(実際は大分子量のワックス)も、分解の上で同様に水素添加すれば同じ製品をつくることができる。
無理に水素を水素のままで使う必要はない。液体に燃料に変え、今の物流網に流し込んだ方が効率はよい。実際に今のガソリンや軽油、航空燃料には合成・改質油やバイオ燃料も混ぜられている。面倒な水素供給網を作るよりも、そちらのほうが手っ取り早く安価ですみ、事業倒れのリスクも少ないのである。
衝撃!「水素社会」は来ない その1
衝撃!「水素社会」は来ない その2
http://japan-indepth.jp/?p=25329
http://japan-indepth.jp/?p=25334
http://megalodon.jp/2016-0212-0443-17/japan-indepth.jp/?p=25329
http://megalodon.jp/2016-0212-1800-20/japan-indepth.jp/?p=25334
上述の記事からいえるのは、水素ステーションという危険施設関連の野望はすべて敗れ、単に経済的にも敗北する邪道なので、水素についてあるべきなのはメタン発電所、藻による石油精製の添加物への応用だけとなるだろう。これらは産業用であり、一般電源はある程度の規模以上の建物への太陽光発電システムの義務付けと一般家庭への設置助成によって発電が利益となる状態を県域で保つことで、既に全国1位の太陽光発電力をさらに強化していくべきとなる。
いわば近未来の発電は主として藻石油発電、メタン発電、太陽光発電の3つの電力構成へ経済的にのみさえきりかわっていくはずだ。水素ステーションを行政があとおしするべきではなく、水素自動車についても同様となる。水素関連の野望は原子力施設同様の末路となるだろう。メタン発電に関しては海底採掘が地震原因をともなわないかについて注意深く研究実践が進められるべきである。