2021年3月20日

原発再稼働が日本原電(東京都千代田区)による人権侵害とする判決自体は正しいが、近代合理主義や科学主義に基づく科学哲学解釈の部分には明らかな誤りがみられる

東京千代田区の会社・日本原電が、茨城県におしつけている原発を、県民総勢は公害だといってやめてくれといっているのに無理やり再稼働させようとしているその意図は間違いなく拝金主義であり、同時に、人権侵害である。端的にいえば「とある県民の命とひきかえに俺たちの金を搾り取れ」というのが日本原電が東電ら大手電力会社並びに、東京都庁や日本政府をおもとするその株主たちと共謀している、一大重大犯罪である。

 よって水戸地裁の前田英子裁判長の判決の結論自体は、「(日本原電による東海第二原発再稼働は、)人格権侵害の危険がある」という点で全く正しい。
 しかし、その詳細を読むと必ずしも結論を導き出す過程が正しいと言い切れない部分がある。結論は正しいのだが。

 第一に日本政府(原子力規制委員会)・日本原電側の地震・津波の想定に不合理な点がない、と前田氏は言っているがこれは誤りだ。
 現代の地震科学をある程度以上にやって、かつ、その科学哲学を批判的に考察でき、また福島の前例をみれば確実にわかる事として、現代の地震科学は極めてにわかづくりのもので地震や津波について「想定」を作ってもそれが現実とは大幅に違うモデルになっていることが自明である。その地震科学的な想定が何もかも覆った、すなわち誤りだったからからこそ福島原発事故が起きた。科学は真理ではない。単なる仮説の集まりだ。
「東日本大震災と同様の地震動が茨城沖で起きると想定できない」という日本政府・日本原電側の主張は噴飯ものであり、どんな物理的模擬でも、事前に将来に想定する要件を入れていなければどんな仮説でも作れるのである。例えば現代の地震科学内では、発生前に起きうる地震の予想は原理的にできていないのであり、できていることといえば過去の地震の発生率から信憑性の非常に低い「仮説」として、一定期間後に似た様な地震が起きるのではないか、というあてずっぽうに限りなく近い想定だけなのだ。またこの地学者らのする地震のあてずっぽう予測には、地下でプレートが動く事でそれらのずれで地震が起きる筈だ、という前提を置いているが、はっきりいって、これが真に地震の原因だと断定できる根拠もなければ、それらの動きは複雑系であって捉え切れていない。
 いいかえれば「地震が起きる前にどこでどの程度の大きさのものが起きるか」ということは、現代の地震科学では占いレベルのことしかいえていないのである。だから想定によっては茨城沖ないし茨城県界隈でどんな震度の地震が起きてもおかしくない。
 また例えばまったく想定外の事態として全く別の原因、具体的には隕石・何らかの巨大飛行物体落下とか、太平洋沖での大規模地震の余波で、茨城に同様の大地震が起きる可能性は誰にも排除できない。科学者はある意味では天然のバカであり、想像できるだろうに仮説の中で想定していない事態が起きたら手のつけようもなく予想を外す結果になるのである。

 第二に、同様の事は津波の予想についてもいえる。どんな不測の事態で大津波が発生するかなど誰にも未来予知などできないし、そうであれば、沿岸部に原発を作って安全性を検証し、すぐ隣でその予想をはるかに超えた大事故が起きたにもかかわらず、再び同じ過ちを繰り返そうとするなど、人類の傲慢さの中でも、東京都民の最悪の公害による金儲け主義以外なにも示していないのだ。
 原電側は17m程度の津波しか想定していない、それが最大だと主張した。なんという驕りだろう。どんな波の動きが起きるか全て自分が予想可能で自然の支配者、計算者だとでも思っているのか。自然現象は複雑系であり、ニュートン力学ほど理想的・計算可能な部分のみでできていない。プレートの重なりが少しのずれで想定を超えた深みに落ち、たった10m高い津波になっただけで即何十万人も死亡するのが現実ではないか。自称科学者なるものの想定を超えた津波がきたからこそ福島原発は大災害に至ったのではないか。科学者は神だろうか。全知の存在だろうか。地球科学の限界がここにあり、複雑系の未来が正確に予想できている存在など、我々人類の知能の中に一人たりとも存在したことはないし、どれだけ計算可能性を突き詰めようが、また未来でも到底ありえないのである。
 つまり「未来はどうなるかおよそ全然わからない。特に、複雑系の問題に関しては、想像を超えたあらゆる想定がありうる」というのがこの世の真実であり、合理主義だの科学主義はこれに何の反論もできない。複雑系の部分として想定した津波の高さを超えて大津波が襲った福島沖で、「想定が間違っていた」と科学者が言い直そうともう死んだ人たちは戻ってこない。何の責任もとらず日本政府の関係者・東電幹部・東電株主らは今もぬくぬくと福島人からむさぼってきた退職金だの配当金でくらしているのである。

2021年3月18日

前田英子裁判長は名誉茨城県民・水戸市民にふさわしい

日本原子力発電(東京都千代田区)東海第2原発(茨城県東海村)は安全性が確保されていないとして、茨城県など9都県の住民が同社に運転差し止めを求めた訴訟で、水戸地裁(前田英子裁判長)は2021年3月18日、運転を認めない判決を言い渡した。
――日本経済新聞『東海第2原発の運転認めず、水戸地裁判決』2021年3月18日

水戸地裁の前田英子裁判長は、本気で、茨城県・常陸国史全体で言っても最も優れた判決を今日出したといっていいと思う。これは冗談抜きで日本国全体のみならず世界史全体にとっても快挙であり、ある立地自治体の外の何らかの会社・政府が、立地自治体の住民の意向を無視して、公害で金儲けをする権利はない、と認めた様なものだろう。

 福井地裁もこの点では誠実な判断をしたといえるが、茨城の場合は県民投票による民意が自民党(県議)の公益を害する党利党略によって侵害されている最中なので、いわゆる党争によって解決を図ろうとしている最中だったわけである。自民党県連の保守派を完全にやり込めない事には一歩も公害防止ができない状態にあったが、その自民党が原発中立を気取っていた大井川知事の再選を表明してしまったので脱原発が頓挫したままだった。

自民党の秋本真利衆院議員=千葉9区=が水戸市で2021年3月28日に予定している脱原発をテーマにした講演会を巡り、自民党茨城県連幹部が講演会を中止するよう党本部に要請していたことが16日、県連幹部への取材で分かった。(中略)県連は、秋本氏から講演会開催について事前に連絡がなかったことなどを問題視。県連の海野透会長代行ら幹部が12日、都内の党本部を訪ね、二階俊博幹事長に講演会を中止するよう対応を求めた。秋本氏の事務所にも抗議文を届けたが、返事はないという。
ー―茨城新聞『脱原発テーマの講演 自民茨城県連が中止要請 秋本衆院議員が水戸で予定』2021年3月17日(水)

 他方、スガ首相側は低炭素文脈で脱原発に舵を切っていたので、要するに茨城自民党側だけが、東京都の日本原電と共に、公害を前提にした拝金目的で、日本全体の脱原発趨勢の足を引っ張っている状態だったというほかない。端的に言うと、東電はじめ自民党内の原発保守派は、時代の必然的な再生可能エネルギー転換への流れについてこれなくなった人たちである。

原発を中心とする大規模集中電源にはコスト的な優位点は全くない。(再生可能エネルギーの発電コストが低減し導入が進む一方、原発は新増設や建て替えに多大な費用を要することから)フェードアウトしていく
ー―秋本真利、自民党・衆議院議員

  しかし前田裁判長の英断で完全に再稼働派が敗れた。これで茨城県民と首都圏・南東北圏の住民が、命も財産も、幅広く救われたといっていい。
 茨城県庁や水戸市はこの英断に敬意を表し、前田英子氏に名誉県民・名誉市民の称号を与えるべきに違いない。脱原発を表明した前・橋本知事に、進んで反旗をひるがえした大井川知事が責任放棄でずるずると重大事を先延ばしにし、自民党の保守派につけあがらせた因果が、こういう結末になった。
 大井川氏は本来、行政側が決断すべきことを司法任せにした責任を感じてほしい。一体どこの世界に、千葉から通って茨城県知事をして、しかも茨城県全域に大公害をもたらす東京都の会社がもっている危険施設に再稼働許可するやつがいるのだろうか。それでは茨城県民を犠牲に自分が最高の地位からただ飯くらってるようなものであろう。再選防止条例をつくるといってたのに二期目もやるつもりって時点で、公約的に問題ある。一体いつになったら最初から権利侵害にすぎない再選防止条例なんてつくれるつもりなのか。県民が誰かに知事を頼む権利をなぜ行政の長が侵害できるのか。県民に具体的に公害をもたらす施設で、間接的に日本原電と絡んで、交付金で金儲けしてきた自民党電源保守派ともども、是非とも県議会で説明してほしい。